アイヌ民族の女性(明治10年代)
「タマサイ」と「シトキ」はアイヌ民族の宝物(イコロ)の一つで、儀式で正装する際に女性の胸に飾られていました。また、熊祭りの時に熊の首にかけられた記録も残っています。
江戸時代に黒龍江(アムール川)下流域と樺太(サハリン)で行われた山丹交易で、アイヌ民族が「サンタ」と呼んでいたウリチ族を主として、ニブヒ、オロチ族などから手に入れた青色や黄色、黒色などのガラス玉を使用しています。
Necklace of glass beads. Hokkaido Ainu. 19th century. detail.
中心にシトキと呼ばれる飾り板を付けた首飾りは、重要な宗教的儀式に用いられました。
Woman’s Necklace. Ainu, late 19th to early 20th century.
シトキは人体に見立てられ、個々の玉に名前があるといいます。
心臓にあたる飾板「シトキ」のすぐ上はサパネタマ(親玉、頭玉)、さらに上にいくに従いレクツンタマ(頸玉)、ペンラムタマ(胸玉)、ツマムタマ(胴玉)、テクンタマ(手玉)、ケマウンタマ(足玉)などと呼ばれます。
玉だけのものはタマサイ(玉サイ・玉彩)と呼ばれ、盛装した時、あるいは通常の儀式に使われていました。
タマサイは中央の大きな玉がヌムンタマ(核玉)、ポロヌムタマ(大核玉)と呼ばれるそうです。
◆タマサイの素材や呼び名
≪紐≫
布や樹皮の繊維
≪シトキ≫
玉飾りの真ん中の金属(飾り板)
≪玉の種類≫
クンネkunne黒
フレhure赤
レタラretar白
シウニンsiwnin黄色、緑
シリキオsirk-o文様入り
コンルタマkonru-tamaガラス玉
アイヌ民族の女性にとって玉類はとても大切なもので、紐がたくさん連なっていたり、たくさんの玉が付いているほど上等なものとされており、姑から嫁、母から娘へと伝えられる宝物でもありました。
Portrait of three Ainu men and a woman – from the island of Hokkaido in northern Japan. About 1900, Japan.